「ホームページって、作れますか?」
知り合いから、そう聞かれたことがありました。当時の私は、まさか自分がこの仕事を始めるとは思っていませんでした。でも今、振り返ると、あの一言が入り口だったのかもしれません。
なぜ、福祉の現場を離れた私が、福祉事業所のホームページを作ろうと思ったのか。少し、私自身の話をさせてください。
私はこれまで、福祉と医療の現場をいくつも歩いてきました。
介護職員から始まり、看護補助者、理学療法士、そしてグループホームの世話人。立場を変えながら、ずっと現場にいました。
失敗もたくさんあります。うまくいかなかったことも、数えきれません。それでも、場面場面で「誰かの役に立てたな」と思える瞬間が、確かにありました。
中でも、私が苦にしなかったのは「その人の話を聞く」ことでした。患者さんや利用者さんの話を傾聴すること。これは、得意な方だったと思います。
そして、話を聞いた上で「選択肢を示す」。
「Aという方法があります。Bという方法も考えられます。どちらにしますか?」——専門家として、目の前の人に選択肢を示すこと。それが私の仕事だと思っていました。
ところが、私は現場に立つことが難しくなりました。
心臓の病気でした。最終的に、現場に立つことはやめようと、医師と相談して、自分で決めました。
不思議と、悔しさや諦めはありませんでした。意外なほど冷静に、その事実を受け止めていました。
ただ、こう思ったんです。
福祉の世界で生きてきたのだから、これからも福祉の世界で生きていくのだろうな、と。
そのとき気付きました。私の仕事の本質は、「現場に立つこと」そのものではなかった。傾聴して、選択肢を示すこと。これこそが、私がずっとやってきたことだったんです。
立ち方が変わっても、これは続けられる。そう思いました。
福祉の世界で生きるとは、私にとって「助け合う」ということです。
人生は、助け合いだと思っています。ただ、自分が誰かを助けるとき、できることは限られている。それも、よく分かっています。
でも、福祉の世界でなら——長く歩いてきたこの世界でなら、自分は誰かの役に立てるんじゃないか。そう思えたんです。
では、現場に立たない自分に、今、何ができるのか。
考えた末に辿り着いたのが、情報発信でした。
利用者さんの立場に立ってみると、よく分かります。事業所がどんな場所で、普段どんな暮らしがあって、管理者がどんな顔で、どんな考えを持っているのか。それが分かっていた方が、選ぶ側の選択肢は、必然的に増えるんです。
そして、福祉の現場には、ホームページやブログにまで手が回らない事業所が、まだまだ多い。それも、現場にいたから知っています。
だったら、そこでなら、私が役に立てるかもしれない。傾聴して、その事業所の魅力を言葉にして、地域に届ける。現場で利用者さんにやってきたことを、今度はホームページという形で続けられるかもしれない。
そう考えて、私はこの仕事を始めました。
立ち方は、変わりました。
でも、やりたいことは、何も変わっていません。